音楽ライター・金子厚武のブログ
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ALBUM OF THE YEAR 2013<DOMESTIC>総括

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1 赤い公園 / 公園デビュー
2 tofubeats / lost decade
3 やけのはら / SUNNY NEW LIFE
4 downy / (無題)
5 アナログフィッシュ / NEWCLEAR
6 ビイドロ / またあしたね
7 きのこ帝国 / eureka
8 土井玄臣 / The Illuminated Nightingale
9 住所不定無職 / GOLD FUTURE BASIC,
10 andymori / 宇宙の果てはこの目の前に
11 禁断の多数決 / アラビアの禁断の多数決
12 People In The Box / Weather Report
13 森は生きている / 森は生きている
14 SEBASTIAN X / POWER OF NOISE
15 sleepy.ab / neuron
16 (((さらうんど))) / New Age
17 世武裕子 / 映画「だいじょうぶ3組」オリジナル・サウンドトラック+「みらいのこども」
18 吉田ヨウヘイgroup / From Now On
19 青葉市子 / 0
20 環ROY / ラッキー
21 曽我部恵一 / 超越的漫画
22 COMEBACK MY DAUGHTERS / Mira
23 THE MIRRAZ / 夏を好きになるための6の法則
24 SuiseiNoboAz / ubik
25 清竜人 / WORK
26 NILE LONG / Diggin' It Up
27 長谷川健一 / 423
28 Galileo Galilei / ALARMS
29 yukaD / Exhibition
30 MY WAY MY LOVE / The Fact Is
31 ヤーチャイカ / ふぁるすふろむあばゔ
32 Babi / Botanical
33 Mop of Head / Breaking Out Basis
34 Seiho / Abstraktsex
35 Veni Vidi Vicious / T.I.N.T.L.A
36 plenty / this
37 相対性理論 / TOWN AGE
38 taffy / Lixiviate
39 Fla$hBackS / Fl$8ks
40 geek sleep sheep / Nightporter
41 THE NOVEMBERS / zeitgeist
42 Serph / el esperanka
43 DALLJUB STEP CLUB / DAL ST
44 椎名もた / アルターワー・セツナポップ
45 Alfred Beach Sandal / Dead Montano
46 カメラ=万年筆 / bamboo boat
47 うみのて / IN RAINBOW TOKYO
48 nhhmbase / 3 1/2
49 テスラは泣かない。 / Anderson
50 The Acid House. / The Acid House.
次点 サカナクション / sakanaction
次点 KANA-BOON / DOPPEL
次点 THE BAWDIES / 1-2-3
次点 RADWIMPS / ×と○と罪と
次点 クリープハイプ / 吹き零れる程のI、哀、愛
次点 パスピエ / 演出家出演
次点 ハルカトミユキ / シアノタイプ
次点 高橋幸宏 / Life Anew
次点 タルトタタン / グーテンベルクの銀河系
次点 bloodthirsty butchers / youth(青春)


Era of Post Pops

 2013年は新しいポップスの年であり、赤い公園とtofubeatsがそれを象徴する2組だったように思います。インターネットで過去の音源が手軽に聴けるようになって早数年、国内における洋楽産業の不振によってリアルタイムの海外の音楽が10代~20代に伝わりにくくなったこととあいまって、近年はニューミュージック、シティポップからJ-POPへと至る70~90年代の国内ポップスが掘り返されました。そして、それをそれぞれの手法で再構築し、新しいポップスとして提示する作り手が脚光を浴びるという動きが、メジャー/インディー問わず、目立っていたように思います。元々越境型のラッパーで、共にポップス寄りの作品を発表したやけのはらとイルリメの(((さらうんど)))、はっぴいえんどとムーンライダーズのDNAを受け継いだ森は生きている、往年のロックンロールと渋谷系とアイドルを同列に愛する住所不定無職あたりがその典型。その中でも、クラシックで育ち、日本のポップスを愛し、それを00年代を通過したロック・バンドのフォーマットで鳴らしたのが赤い公園であり、シティポップやアイドルへの愛情をエレクトロニック・ミュージックに乗せたのがtofubeats。現在は共に活動の拠点をメジャーへと移し、この一年で大きな飛躍を遂げました。

 少し見方を変えれば、これは現代が作曲家の時代だということを示しているとも言えるでしょう。赤い公園の津野米咲がSMAPに、tofubeatsがlyrical schoolに曲提供しているように、現在のアイドル・ブームというのは、優秀な作曲家がいるからこそ成り立っているものであり、バンドマンによるアイドルへの楽曲提供が増えたのは2013年の特徴。中田ヤスタカやヒャダインが引き続き活躍してるのももちろんそうだし、言ってみれば『あまちゃん』の大友良英も、ボカロPの活躍も、その文脈で語ることができるはず。そういう確固たる作曲家がいるタイプのバンドを並べてみると、赤い公園、住所不定無職、禁断の多数決、あとパスピエなんかが出てくるわけですが、やはり高い作曲能力プラス萌え/アイドル的要素という意味で現在のシーンの基盤を作ったのは相対性理論だなあと思うわけです。元メンバーの真部と西浦のアゼル&バイジャンがプロデュースし、津野とtofubeats(と、bloodthirsty butchersの吉村と田淵)が参加したタルトタタンの『グーテンベルクの銀河系』は、いろんな意味で今年を象徴する一枚だったと思います。

 さて、そうなると赤い公園とtofubeats、どちらを一位にするかが迷うところで、かつては無料で音源をばら撒いていたtofubeatsがメジャーに進出したというのはすごく意味のある出来事だったとは思うけど、『公園デビュー』がメジャーのファーストフルアルバムであることや、2013年が女性の活躍が目立った年だったことも踏まえて、赤い公園を一位に選びました。作品自体はまだまだ伸び代が感じられる内容だったと思うけど、いろんな意味で「ロック・バンドなんて退屈だ」と言われ続けるこのご時世にあって、「いやいや、全然退屈じゃないじゃん!」と胸を張って言えるだけの魅力が『公園デビュー』にはあったと思います。11月に行われたワンマンで配られた手書きのセットリストには「売れたいです!」って書いてあったけど、ホント売れてほしい。



 ちなみに、津野米咲をはじめ、今活躍してる作曲家の多くが作詞もできちゃうから、「スター作曲家」はいっぱいいても、なかなか「スター作詞家」って生まれにくい。でもそんな中にあって、いしわたり淳治以来、ひさびさにスター作詞家誕生だと思ったのが、元チャットモンチーの高橋久美子。東京カランコロンを皮切りに、ももクロやSCANDAL、年明けにはたんこぶちんとかにも詞を提供していて、こういう人がもっと増えればいいなあ。


 また、2013年という年は「始まりの一年」だったように思います。去年の取材の中でも、特に印象に残っているもののひとつである古川日出男さんとアジカンのゴッチさんとの対談でも触れられていたのですが、2011年の震災・原発事故後、2012年に様々な問題が炙り出され、「いよいよ新しい枠組みを作っていかなくてはいけない」という認識が共有されたのが2013年だったなあと。そんな中、アナログフィッシュ、やけのはら、(((さらうんど)))という、それぞれにつながりがあり、決して表立って旗を振るタイプではないものの、常に社会と対峙した表現を続けてきた三者が、新作のタイトルに「NEW」という言葉を用いていたのが、非常に印象的でした(それぞれ、『NEWCLEAR』、『SUNNY NEW LIFE』、『New Age』)。特に、2011年に『荒野 / On the Wild Side』という作品を発表し、「ここから始まっていく」という姿勢を示していたアナログフィッシュが『NEWCLEAR』へとたどり着いたということが象徴的で、これは『My Lost City』という作品を2012年に発表したceroが、2013年にニューフェイズに突入したこととも通じるように感じました。まだ2014年に出ることが確定ではないにしろ、三部作の完結編となるアナログフィッシュの新作も、ブラック・ミュージックに接近しているceroの新作も、どちらも非常に楽しみです。



 もう一人、「NEW」を用いた印象的な『Life Anew』というタイトルの作品を発表したのが、高橋幸宏。原点に回帰しつつ、新しいバンドでニューモードを示した氏の作品も、非常に印象的でした。特に、かしぶち哲郎と大瀧詠一が12月に続けて亡くなった今、鈴木慶一が歌詞を提供した“The Old Friends Cottage”がより重みを持って響きます。トクマルシューゴからcero、森は生きている、そして2014年にアルバムが予定されている失敗しない生き方やミツメ、また失敗のメンバーと同級生であるカメラ=万年筆やスカート、Babiといった昭和音大勢ら、若い世代が日本のポップスを掘り起こし、後ろの3組にとっては直接的な師でもある牧村憲一が『ニッポン・ポップス・クロニクル 1969-1989』を出版したことも、2013年がポップスの年であること印象付けていました。


 「NEW」という言葉について、もうひとつ触れておきたいのが、6月にリリースされた『夏を好きになるための6の法則』の3曲目にサラッと収録されていたミイラズの“NEW WOIRLD”。この曲は元々2011年にシングル候補とされていた曲ですが、結果的に保留され、2013年にやっと発表されたといういわくつきの曲。ただ、この曲の持つメッセージは、2013年の日本のロック・シーンでこそ広く聴かれるべき内容だったと思うのです。『君繋ファイブエム』から10年、アジカンが横浜スタジアムで記念ライブを行ったのと入れ替わるように、アジカンも所属するKi/oonのコンテストでグランプリを獲得したKANA-BOONが一気にブレイクを果たした2013年という年は、ある意味00年以降の日本のロックの総決算の年であったように思います。そんな中、袂を切ったかのようにあふれ出した、フェスにおける四つ打ちの飽和状態や、国内ロックの海外との乖離に対する議論。ターニング・ポイントがやってきたことは間違いありません。



 00年代の洋楽を中心に、革新的なミュージシャンの名前を挙げながら、その意志を引き継ぎ、新しい世界を切り開いていこうと歌う“NEW WORLD”は、そのキャッチーさも含め、2013年の状況を打ち抜く可能性を持った曲だったと思います。ただ、いかんせんタイムラグがあったことは否めないという感じ。で、これは僕の勝手な願望だけど、ミイラズが2014年にまず出すべきは両A面のシングルで、新曲一曲と“NEW WORLD”の2014年バージョン。次はバンドとしても新体制一発目の作品になるわけだし、タイミング的にもいいと思うんだよなあ。


 では最後に、2014年の展望を少し書いてみると、今年は「99年」がキーワードになるんじゃないかと思います。2013年は「90年代のJ-POPってよかったよね」っていう空気が、特に若い世代において共有された年であり、それはアイドル・ブームの土台にもなっていたはず。そして、これまでの歴史だと、リバイバルは20年周期が一般的だったものの、情報のスピードが速くなった結果、今では15年ぐらいにその間隔が短くなっているように感じます。そんな中、メジャーデビュー作で森高千里を起用して、2013年の90年代感を体現していたtofubeatsが、昨年後半にずっと聴いていたのが99年発売の宇多田ヒカルの『First Love』だったそうで、その15周年を記念したリマスター盤が3月に発売。赤い公園が2月に発売するシングルで平井堅をカバーしてたりもするように、R&Bが戻ってくる感じがちょっとある。で、これは海外におけるインディ・ロックとR&Bの接近、日本でもceroやミツメとかが示している動きともちょっとリンクする部分があると思うんだけど、さてどうでしょう?

 あとギターロックの新たな動きという意味では、00年前後の下北沢のギターロックが再評価されるんじゃないかと。新年早々のサプライズとなったBURGER NUDS(99年結成)の再始動、そして当時は必ず比較されていたバンプが結成20周年で、3月に新作を発表(CDデビューが99年)。年明けにはヘルマンの復活作が出て、アートの新作も制作中みたいだし、あとはシロップが正式に復活すれば…。そもそも、この時代のバンドっていうのは、90年代の洋楽直撃世代で、当時アジカンはウィーザー、アートはニルヴァーナじゃんって散々言われていたわけです。そこからスタートして、この10年をかけて彼らはオリジナリティを獲得していったわけですが、今はその上澄みだけをすくって、真似するバンドが増えてしまったと。だからこそ、このタイミングで今一度99年に立ち返ってみるということは、意味があることのように思うのです。NMEとかで取り上げられて、逆輸入で紹介されたtaffyなんて、ホントあの時代の下北沢の音だしね。そして、そんな流れの中からまた新しいバンドが生まれてくれば、とってもエキサイティングだと思います。



ではそろそろ、くるりが15周年で、B’zが25周年だった2013年に別れを告げましょう。2014年もよろしくお願いします。
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by ashadeofshyness | 2014-01-14 14:24 | YEAR IN MUSIC
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