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ALBUM OF THE YEAR 2015 総括1 cero / Obscure Ride 2 星野源 / YELLOW DANCER 3 ペトロールズ / Renaissance 4 plenty / いのちのかたち 5 toe / HEAR YOU 6 Serph / Hyperion Suites 7 アナログフィッシュ / Almost A Rainbow 8 DALLJUB STEP CLUB / We Love You 9 ザ・なつやすみバンド / パラード 10 NOT WONK / Laughing Nerds And A Wallflower 11 Spangle call Lilli line / ghost is dead 12 クラムボン / triology 13 服部峻 / Moon 14 D.A.N. / EP 15 mouse on the keys / Flowers Of Romance 16 Keishi Tanaka / Alley 17 パスピエ / 娑婆ラバ 18 People In The Box / Talky Organs 19 indigo la End / 幸せが溢れたら 20 tofubeats / POSITIVE 21 米津玄師 / Bremen 22 Madegg / New 23 Base Ball Bear / C2 24 the telephones / Bye Bye Hello 25 Suchmos / THE BAY 26 LAMP IN TERREN / LIFE PROBE 27 踊ってばかりの国 / SONGS 28 Czecho No Republic / Santa Fe 29 ASIAN KUNG-FU GENERATION / WONDER FUTURE 30 きのこ帝国 / 猫とアレルギー 31 東京カランコロン / UTUTU 32 Turntable Films / Small Town Talk 33 the band apart / 謎のオープンワールド 34 ROTH BART BARON / ATOM 35 YOLZ IN THE SKY / HOTEL 36 シンリズム / NEW RHYTHM 37 ビイドロ / ひろばとことば 38 北園みなみ / Never Let Me Go 39 Sugar’s Campaign / FRIENDS 40 Taiko Super Kicks / Many Shapes 41 OKAMOTO’S / OPERA 42 fox capture plan / Butterfly 43 吉田ヨウヘイgroup / paradise lost, it begins 44 ねごと / VISION 45 Alfred Beach Sandal / Unknown Moments 46 sebuhiroko / WONDERLAND 47 skillkills / Ill Connection 49 LILI LIMIT / Etudes 48 Awesome City Club / Awesome City Tracks 2 50 never young beach / YASHINOKI HOUSE 次点 Mr.Children / REFLECTION 次点 ONE OK ROCK / 35xxxv 次点 SEKAI NO OWARI / Tree 次点 Ken Yokoyama / Sentimental Trash 次点 WANIMA / Are You Coming? 次点 BOOM BOOM STELLITES / SHINE LIKE A BILLION SUNS 次点 ORIGINAL LOVE / ラヴァーマン 次点 清竜人25 / PROPOSE 次点 SAKEROCK / SAYONARA 次点 椎名もた / 生きる Ride On The Turning Tide(Need Some Inspiration) 区切りの年となった2014年を経て、2015年は日本のロック/ポップにおける地図が様変わりした一年になりました。まず明確に言えるのは、「ブラックミュージックを背景としたポップス」が一大トレンドになったこと。ここ数年の国内外におけるファンク、ソウル、ジャズなどの盛り上がりを受けつつ、「シティポップ」というワードが改めて冠されることによって、明確な流れになったように思います。ベストアルバムに選んだceroはそれを象徴する存在で、活動初期からヒップホップをはじめとした多様な音楽性が内包されていたものの、グラスパーやディアンジェロに接近してよりブラックミュージック色を濃くすることで、結果的にシーンの下地を作り上げました。メジャーデビューを果たしたShiggy Jr.やAwesome City Club、インディーシーンで活躍したYogee New Waves、Suchmos、Lucky Tapesなども、ceroが用意した流れを踏まえてシーンに浮上したという言い方ができるでしょう。その一方、昆虫キッズに続いて森は生きているが突然の解散を発表したのは、時代の移り変わりを感じさせました。 もう一人、この流れのキーパーソンとなったのが星野源で、山下達郎や小沢健二らが再評価される中、新たな男性ソロアーティスト像を確立し、紅白歌合戦にも出場を果たしました。そもそも、彼がSAKEROCKのメンバーとしてカクバリズムにおいてceroの先輩であったことを考えれば、ここには一本の線が見えてきます。そして、大先輩にあたるORIGINAL LOVEの田島貴男、アイドルシーンで活躍した清竜人、インディーシーンではKeishi Tanakaや入江陽、シンリズムなど、2015年は星野以外にも男性ソロアーティストの活躍が目立ち、1月27日にはいよいよ岡村靖幸が11年ぶりの新作を発表します。まさに、舞台は整ったという感じでしょう。 そして、星野源のアルバムに参加し、紅白でサポートを務めただけでなく、椎名林檎とのデュエットで紅白のステージに2度登場した長岡亮介率いるペトロールズが、結成10年目にして初のフルアルバムを発表したのがダメ押し。Awesome City Clubから大橋トリオ、Chara、一十三十一らの作品に関わったmabanuaと共に、間違いなく2015年の影の主役でした。ちなみに、林檎のステージにチラリと登場した向井秀徳率いるZAZEN BOYSは、かねてよりロックバンドによるブラックミュージックの独自解釈をひねり上げてきたバンドだったので、2015年に作品が出ていればドンピシャだったはず。まあ、今は吉田一郎のソロと、同じ命題に挑んだBase Ball Bearのアルバムを聴きつつ、2016年に期待しましょう。 「シティポップ」と並んで、2015年のキーワードとなったのが「ポストロック」でした。toeやte’、mouse on the keysにSpangle call Lilli line、そして結成20周年で日本武道館公演を成功させたクラムボンと、日本におけるポストロックの発展に大きく寄与したバンドたちが、そろってひさびさの新作を発表したわけです。僕が監修を担当させていただいた『POST-ROCK DISC GUIDE』が5月に発売されたのですが、この本が企画された2014年には、まさか2015年がここまでのポストロックイヤーになるとは、正直思っていませんでした。これは単なる偶然のようでもあり、最盛期から15年という周期的な理由も考えられますが、ポストロックがジャズとの親和性が高いジャンルであると同時に、様々な音楽的要素を内包した「折衷主義」を基本としたジャンルであることを考えれば、ここにはシティポップとのリンクが見えてきます。つまり、2015年にシティポップとポストロックが盛り上がったのは、音楽の構造的な、折衷的な面白さを見つめ直そうとする動きの表れだったように思うのです。 近年は「ライブの時代」と呼ばれてフェスの影響力が増し、一方ではSNSにおける拡散性が重視された結果、即効性のある音楽が求められ、実際にそういったものが受けていました。しかし、その流れが結果として作品の創造性を奪っていった結果、その揺り戻しが起きたのが2015年だったように思うのです。くるりの岸田さんが、4つ打ちの横行する夏フェスの現状を踏まえた上で、「多分、日本の音楽文化は、これから変わる。複雑な表現をする人が結構増えてきた実感があるけど、全体主義的にシンプルにまとめ上げようとしている大きな力が、そろそろ疲弊してきている気がしている。ポップミュージックの歴史を紐解いていくと、簡単な表現に飽きて、複雑な表現を経て、的を得た素直な表現に変わっていくタームが必ずやってくる」と日記に記したのは、まさにこうした状況を指してのことだったように思われます。the telephonesの活動休止前ラストアルバムが、ここで言う「的を得た素直な表現」だと感じられたのも、非常に印象的でした。 日本におけるポストロック評論の第一人者である佐々木敦氏は『Jazz The New Chapter』に関して、「かつてポストロックが担っていた役割を今果たしている」と指摘しましたが、日本のインディーシーンに目を向けてみると、その直系と言うべきYasei Collectiveや、よりヨーロッパ的なfox capture plan、もしくはD.A.N.、DALLJUB STEP CLUB、skillkillsといったバンドが、現在進行形のエレクトロニックミュージックと向き合った非常に折衷的な音楽性で、現代におけるポストロック的なあり方を体現していたように思います。当時のポストロックのすぐ隣にはエレクトロニカがありましたが、ジャズをテーマに据えていたSerphの新作は時代感的にもジャストだったし、Serphと同じレーベルから作品を発表した服部峻、もしくはMadeggなど、海外におけるARCAやOPNらと共振する新たな電子音楽の担い手の台頭にも興奮を覚えました。 歌もののバンドに目を移すと、LITEやtoeを影響源に挙げるLILI LIMITや、残響レコードの若手でメジャーデビューも決まった雨のパレードは、同時代の海外のインディロックも視野に入れながら、それをあくまでポップに鳴らすことで、現代的なポストロックを体現しているように思います。この2バンドの前にいるのが近作のエンジニアをtoeの美濃隆章が担当しているゲスの極み乙女。で、彼らもブラックミュージックとの接点が強いバンドであることを考えると、星野源と共に紅白に出場を果たしたというのは必然だったような気もしてきます。 こうした動きは2016年により顕在化することになると思われますが、一方ではすでにそのカウンターとなる動きも起きつつあります。シティポップやポストロックが基本的に端正でソフィスティケイトされた音楽であるのに対し、パンク~オルタナの再興が起こりつつあるのです。Ken Yokoyamaの「ミュージックステーション」出演も大きな話題を呼びましたが、その直属の後輩であるWANIMA、もしくは04Limited Sazabysらは大先輩を追い抜かんばかりの勢いで支持を獲得。よりアンダーグラウンドに目を向ければ、元GOING STEADY~銀杏BOYZの安孫子真哉が主宰するKiliKiliVilla発のNOT WONKが大きな注目を集めました。かつて「青春パンク」と一括りにされたバンドたちの中にも、多様性があったことを思い出す人もいることでしょう。やはり、時代は巡るのです。 このように、2015年は音楽地図が様変わりした年だったことは間違いないものの、ベストアルバムの上位にcero、星野源、ペトロールズを選んだように、作品のクオリティという意味では、この状況を作り上げてきた音楽家たちに一日の長があったように思います。アナログフィッシュやザ・なつやすみバンドはシーンの流れとも接点を持ちつつ、独自性のある素晴らしい作品を残したし、plentyを筆頭に、Czecho No Republic、東京カランコロン、ねごとといった若手から中堅へと歩みを進めたバンドたちが、それぞれ手応えのある力作を作り上げたのも見過ごすわけにはいきません。そして、だからこそ、2016年は今年頭角を現した若手が、作品で結果を残してくれることを期待したいと思います。 業界のドラスティックな変化が続き、旧来のシステムでは立ちいかなくなったことに誰もが気づいた2015年。そこに再び新たなシステムを構築しようとする動きに対し、多くのアーティストが「自由なクリエティブこそが時代を作っていく」という姿勢を表明していることは、非常に頼もしく感じられます。2016年も、既存のシステムやルールの外側からこそ、素晴らしい音楽が生まれてくるはずです。 関連 2015年上半期のバンドシーンを振り返る。「シティポップブーム」の本質とは? ポストロックの季節が再到来? 時代のキーワードは「折衷主義」 くるりから考察。複雑な表現が目立った2015年、次はどうなる?
by ashadeofshyness
| 2016-01-10 22:51
| YEAR IN MUSIC
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