音楽ライター・金子厚武のブログ
by ashadeofshyness


2014年の現状④GO TO 2020~東京オリンピックに向けて

昨年まで「東京の音楽」と言えば、②で書いたような東京のインディーシーンで起こっていることを指すことが多かったように思いますが、2020年の東京オリンピック開催が決定し、少しずつ再開発が進む中、改めて東京という都市を見つめ直し、それを鳴らそうとする作品が増えてきました。例えば、「フラット化するテン時代の“Tokyo”に警鐘を鳴らす」作品であり、「驚異的なスピードで移り変わり、コミュニケーションまでもを含めたすべてが等価で均一的になっていく時代に抱く無常感」が込められているというavengers in sci-fiの『Unknown Tokyo Blues』と、今年一月にメモリアルな初ライブを行ったSerphの別名義Reliqの、「SF化する現実のための曲集」「気候変動の激しい世界における新たなトロピカルミュージック」をテーマとした『Metatoropics』は、デジタル化が進む都市の中で人間性を掴み直すという意味で、まさに同テーマの作品。AKBのドキュメンタリー映画の音楽を手掛けたことが話題を呼んだworld’s end girlfriendのレーベルから出たbronbabaの『neo tokyo』は文字通り『AKIRA』とのリンクがあるし、今後こういったテーマの作品が増えることは間違いないと思います。





このインタビュー、ぜひ読んでほしいです。
「変化し続ける世界をサバイブしよう Serph(Reliq)インタビュー」
http://www.cinra.net/interview/201404-reliq

そんな中、ずばり“東京”という楽曲を含んでいたのが、踊ってばかりの国のセルフタイトル作であり、あの作品は日本という国全体を見つめながら、東京という街をあぶり出してもいました。これまで存在する“東京”という名の名曲の多くが、個人史に基づいたものであったりするのに対して、〈政治家のジジイが決めたことで また子どもが死ぬよ 難攻不落の民の声 お上には届かないよ〉と歌った踊ってばかりの国の“東京”は、日本社会の中心としての東京を明確に見据えたものであり、実はありそうでなかった曲だと思う。最近だと、きのこ帝国が“東京”というタイトルの新曲をやっていて、音源化が待ち望まれるんだけど、あれはどっちかっていうと個人史よりかなあ。



2012年のロンドンオリンピック開催に合わせてハイドパークでライブを行い、ロンドンを通る高速道路を題材とした“Under the Westway”という楽曲を発表しているブラーは、今年の一月に行われた約10年ぶりの来日公演でも、バックドロップにWestwayの写真を掲げていました。そう、ブラーというバンドは今も愛情と皮肉を交えつつ、ロンドンという街を体現し続けているのです。東京オリンピックの開会式で誰が音楽監督を務めるのかという話題もよく耳にしますが、それが誰であろうとも、2020年に向けて「東京の音楽」を様々なアーティストが提案していくことになるのは確実。もしかしたら、その流れの中で「国際都市としての東京」が見直され、洋楽との関連性が見直されるかもしれないし、ブラーのようなヒーローが表れることもあるのかもしれない。



最高…!

そういう意味で僕が個人的に期待するのは、踊ってばかりの国と並んで、やっぱりアナログフィッシュなんですよね。震災前に作った“PHASE”という曲で、〈失う用意はある? それとも放っておく勇気はあるのかい?〉と歌い、“抱きしめて”という曲で〈危険があるから引っ越そう/事件が起きるから引っ越そう/ねぇどこにあるのそんな場所がこの世界に もうここでいいから思いっきり抱きしめて〉と歌ったアナログフィッシュの音楽は、もちろん日本全体のムードを示していると同時に、やっぱり都市生活者としての、東京に生きる者の歌だと思う。アナログフィッシュというバンドは、これまでずっと「City」を歌い続けてきたバンドでもあるしね。ニューアルバムに先駆けて、先行で公開されている“はなさない”は、ミニマルなギターフレーズといい、サイケ感といい、メランコリックな雰囲気といい、“Beetlebum”をはじめとしたブラーの楽曲を思い出すんだけど、そういう音楽的な近さも含め、アナログフィッシュがブラーのように「東京」を改めて体現してくれるんじゃないかと。下半期に予定されている新作には、そんな期待も持っています。


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# by ashadeofshyness | 2014-07-11 23:27 | YEAR IN MUSIC

2014年の現状③BACK TO 1999~下北沢ギターロックの再評価

これに関しては、年明けのブログに書いた2014年の展望の引用から。

「ギターロックの新たな動きという意味では、00年前後の下北沢のギターロックが再評価されるんじゃないかと。新年早々のサプライズとなったBURGER NUDS(99年結成)の再始動、そして当時は必ず比較されていたバンプ(99年CDデビュー)が結成20周年で、3月に新作を発表。年明けにはヘルマン(99年CDデビュー)の復活作が出て、アート(木下理樹がソロで99年にデビュー)の新作も制作中みたいだし、あとはシロップ(99年CDデビュー)が正式に復活すれば…。そもそも、この時代のバンドっていうのは、90年代の洋楽直撃世代で、当時アジカンはウィーザー、アートはニルヴァーナじゃんって散々言われていたわけです。そこからスタートして、彼らは10年以上をかけてオリジナリティを獲得していったわけですが、今はその上澄みだけをすくって、真似するバンドが増えてしまったと。だからこそ、このタイミングで今一度99年に立ち返ってみるということは、意味があることのように思うのです」





というわけで、バンプとアートとヘルマンが新作を発表し、BURGER NUDSが再結成ライブを行い、6月27日にsyrup16gが再結成を発表した2014年の上半期は、00年前後の下北沢のギターロックバンドたちが一斉に動きを見せた年として記憶されることでしょう。ACIDMAN(99年に現在の3人に)もひさびさの新曲を発表すると共に、アンソロジーツアーを行い、現在はプロデューサーとしても活躍するStereo Fabrication of Youth(99年結成)の江口亮は、la la larksとして再度CDデビュー。アートの新作にはアジカンの後藤正文がプロデュースで参加、後藤のソロ作にはストレイテナーのホリエアツシが曲提供といった動きからも、時代感を感じずにはいられません。最近20代前半のミュージシャンの取材をして、バンドに興味を持ったきっかけを訊くと、ほぼ半数以上が「最初は普通にバンプとかアジカンを聴いて…」みたいに答えるわけで、この15年ほどで、彼らの存在がいかに今のバンドにとっての教科書となったかというのも、改めて感じた上半期でした。





洋楽からの影響云々ということに関しては、②で書いたように今はやはりUSインディからの影響を受けたバンドが多く、Gotch名義でベックやウィルコやスフィアン・スティーヴンスからの影響を消化したソロ作を発表したアジカンの後藤は、ボールズや吉田ヨウヘイgroupらをフックアップし、恒例となった『NANO-MUGEN FES.』の開催含め、今もリアルタイムの邦楽と洋楽を繋いで土壌を作ろうとする動きを続けていることがわかります。時代が変化し、かつての下北沢のバンドたちのように、USインディの影響下にあるバンドたちが次々メジャーデビューという流れにはならないまでも、同じく②で書いたように、HAPPYやボールズなど、関西のバンドが次々と表舞台へと出て行く動きから、かつての下北沢を連想することも可能と言えるかもしれません。



それにしても、オアシスのデビューアルバム発売20周年にあたる今年、解散ライブに『LIVE FOREVER』というタイトルを掲げたsyrup16gが復活し、一方でGotchが『Can't Be Forever Young』というタイトルのソロアルバムを発表するっていうのは、何だか面白いですよね。ま、オアシスはまだ再結成しなくていいと思うけど 笑。
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# by ashadeofshyness | 2014-07-09 23:24 | YEAR IN MUSIC

2014年の現状②『20140420』と関西からの刺客

森は生きている、ayU tokiO、失敗しない生き方、peno、ROTH BART BARON、吉田ヨウヘイgroupが出演し、青山月見ル君想フで行われたイベント『20140420』は、2014年上半期の東京インディーシーンにおける記念碑的イベントだった。中でも、昨年ファーストを発表した森は生きていると、今年それぞれファーストを発表したROTH BART BARON、吉田ヨウヘイgroupの3組は、「cero以降」のシーンを担う存在として、多くの人に認知されたと言っていいのではないかと思う。





「cero以降」とか言っちゃうのは何ともざっくりした言い回しではあるが、つまりはアメリカーナ、サイケデリック、チェンバーポップ、トロピカルなど、近年のUSインディの流行とリンクする部分を持ちつつ、それぞれが独自の音楽性も持ち合わせ、最終的には日本語のポップスに着地しているバンドたちであり、ブルックリンシーン、もしくはティンパンアレイにも通じる、ミュージシャン間の活発な交流も特徴として挙げられる。そう考えると、やはりcero以前にシーンの礎を築いたのはトクマルシューゴとそのバンドメンバーの存在であり、5月~6月に行われた10周年記念公演は、上半期のもうひとつのハイライトだったことは間違いない(本当に素晴らしかった!)。



また、トクマルシューゴと並び、USインディとの接点という意味で重要なOGRE YOU ASSHOLEはますます独自路線を強めつつ、10月には森は生きているとの2マンが予定されるなど、やはりシーンの先達としての存在感を放っている。また、ちょっと目線を変えると、cero、トクマルシューゴの前にはSAKEROCKがいるとして、もともとレゲエ/ダブにとどまらない折衷的な音楽性が持ち味で、最新作『HYPER FOLK』では独自のチェンバーポップをさらに進化させたbonobosは、この流れとリンクする存在だったとも言えるように思う。重厚なスケール感という意味では、ROTH BART BARONに一番近いのはbonobosのような気もするし。



楽曲の素晴らしさもさることながら、ヒューマンな内容のビデオにもグッと来てしまいます…。

そして、やはりUSインディのシーンとリンクし、その上で独自のフォーク~ポップスを鳴らしてきた踊ってばかりの国の後輩バンドHAPPYが力のあるマネジメントに所属し、同じく上半期に素晴らしい作品を残しているシャムキャッツあたりとリンクしつつも、より明確に日本語のポップスを意識したような作品でボールズ(ex.ミラーマン)がメジャーデビューした(正式には7月ですが)というのは、一歩間違えれば内向きにもなりかねない東京のムードに対する関西からのカウンターのようで、シーンがまた新たな段階に突入したことを伝えている。また、ここには①で挙げたKANA-BOONやキュウソネコカミなど、関西出身バンドが続々と浮上していることとの関連も見て取れると言えよう。



ちなみに、YouTubeで「HAPPY」を検索すると、海外アーティストの今年上半期の顔であるファレル・ウィリアムスばっかり出てきちゃうわけですが……彼らもミラーマン同様、改名したりしてね 笑。
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# by ashadeofshyness | 2014-07-08 23:14 | YEAR IN MUSIC

2014年の現状①若手四つ打ちバンドの本格的台頭

KANA-BOONのブレイクをひとつの契機に、KEYTALK、ゲスの極み乙女。、キュウソネコカミなど、四つ打ちを主体とした楽曲によってフェスやイベントなどで爆発的な盛り上がりを見せるバンドたちが、昨年から今年にかけて次々とメジャーデビュー。彼らはポップであることを厭わない世代であり、どのバンドもキャッチーなサビのメロディーを持ち合わせていることも特徴。その効果もあってか、オリコンチャートでもしっかりと結果を残している。

KANA-BOON『結晶星』(シングル) 8位
KANA-BOON『フルドライブ』(シングル) 6位
KEYTALK『パラレル』(シングル) 10位
KEYTALK『OVERTONE』(アルバム) 13位
ゲスの極み乙女。『みんなノーマル』(ミニアルバム) 11位
キュウソネコカミ『チェンジザワールド』(ミニアルバム) 15位





パラレルつながり!

ボカロP出身のowaka率いるヒトリエや、クラムボンのミトがプロデュースを担当したテスラは泣かない。など、更なる有望株もメジャーデビューを果たしているが、ブームとしての見え方は、おそらく今年の夏フェスがひとつのピークになるだろう。すでに、ゲスの極み乙女。はBPMを落としてJ-POP路線に舵を切っているし、KANA-BOONのセカンド、ゲスとキュウソのメジャーファーストアルバムが出揃う頃には、それぞれの方向性がより明確になるはず。

一方、この四つ打ちブームの礎を築いたthe telephonesやavengers in sci-fiらは、より音楽的に進化した力作を発表して、確かな存在感を発揮。そして、歌ものの四つ打ちにも目配せしつつ、「西荻パンク発アキバカルチャー行」な独自のミクスチャーをしっかりと刻み付けたWiennesのメジャーファースト『DIAMOND』は、時代性と独自性を兼ね備えた傑作として評価されるべきだと思う。





上二つのビデオのスタイリッシュさに比べ、下二つのひどさ 笑。

ちなみに、つい先日ひさびさにアジカンの“君という花”を生で聴いたのですが、いやー、遅かった 笑。もちろん、すごくのりやすかったし、つまりは今の若手バンドの四つ打ちがいかに高速化したかってことなわけだけど、自分の体ももう速いのに慣れちゃったんだなあと、改めて思わされたわけです。この10年の変化(“君という花”は2003年作)というのは、まさにインターネットにおけるISDNから光回線への変化のようで、それによって手に入れたものもたくさんあるけど、失ったものもいろいろあるんだろうなあなんて、考えてしまいました。


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# by ashadeofshyness | 2014-07-07 23:04 | YEAR IN MUSIC

ALBUM OF THE YEAR 2013<DOMESTIC>総括

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1 赤い公園 / 公園デビュー
2 tofubeats / lost decade
3 やけのはら / SUNNY NEW LIFE
4 downy / (無題)
5 アナログフィッシュ / NEWCLEAR
6 ビイドロ / またあしたね
7 きのこ帝国 / eureka
8 土井玄臣 / The Illuminated Nightingale
9 住所不定無職 / GOLD FUTURE BASIC,
10 andymori / 宇宙の果てはこの目の前に
11 禁断の多数決 / アラビアの禁断の多数決
12 People In The Box / Weather Report
13 森は生きている / 森は生きている
14 SEBASTIAN X / POWER OF NOISE
15 sleepy.ab / neuron
16 (((さらうんど))) / New Age
17 世武裕子 / 映画「だいじょうぶ3組」オリジナル・サウンドトラック+「みらいのこども」
18 吉田ヨウヘイgroup / From Now On
19 青葉市子 / 0
20 環ROY / ラッキー
21 曽我部恵一 / 超越的漫画
22 COMEBACK MY DAUGHTERS / Mira
23 THE MIRRAZ / 夏を好きになるための6の法則
24 SuiseiNoboAz / ubik
25 清竜人 / WORK
26 NILE LONG / Diggin' It Up
27 長谷川健一 / 423
28 Galileo Galilei / ALARMS
29 yukaD / Exhibition
30 MY WAY MY LOVE / The Fact Is
31 ヤーチャイカ / ふぁるすふろむあばゔ
32 Babi / Botanical
33 Mop of Head / Breaking Out Basis
34 Seiho / Abstraktsex
35 Veni Vidi Vicious / T.I.N.T.L.A
36 plenty / this
37 相対性理論 / TOWN AGE
38 taffy / Lixiviate
39 Fla$hBackS / Fl$8ks
40 geek sleep sheep / Nightporter
41 THE NOVEMBERS / zeitgeist
42 Serph / el esperanka
43 DALLJUB STEP CLUB / DAL ST
44 椎名もた / アルターワー・セツナポップ
45 Alfred Beach Sandal / Dead Montano
46 カメラ=万年筆 / bamboo boat
47 うみのて / IN RAINBOW TOKYO
48 nhhmbase / 3 1/2
49 テスラは泣かない。 / Anderson
50 The Acid House. / The Acid House.
次点 サカナクション / sakanaction
次点 KANA-BOON / DOPPEL
次点 THE BAWDIES / 1-2-3
次点 RADWIMPS / ×と○と罪と
次点 クリープハイプ / 吹き零れる程のI、哀、愛
次点 パスピエ / 演出家出演
次点 ハルカトミユキ / シアノタイプ
次点 高橋幸宏 / Life Anew
次点 タルトタタン / グーテンベルクの銀河系
次点 bloodthirsty butchers / youth(青春)


Era of Post Pops

 2013年は新しいポップスの年であり、赤い公園とtofubeatsがそれを象徴する2組だったように思います。インターネットで過去の音源が手軽に聴けるようになって早数年、国内における洋楽産業の不振によってリアルタイムの海外の音楽が10代~20代に伝わりにくくなったこととあいまって、近年はニューミュージック、シティポップからJ-POPへと至る70~90年代の国内ポップスが掘り返されました。そして、それをそれぞれの手法で再構築し、新しいポップスとして提示する作り手が脚光を浴びるという動きが、メジャー/インディー問わず、目立っていたように思います。元々越境型のラッパーで、共にポップス寄りの作品を発表したやけのはらとイルリメの(((さらうんど)))、はっぴいえんどとムーンライダーズのDNAを受け継いだ森は生きている、往年のロックンロールと渋谷系とアイドルを同列に愛する住所不定無職あたりがその典型。その中でも、クラシックで育ち、日本のポップスを愛し、それを00年代を通過したロック・バンドのフォーマットで鳴らしたのが赤い公園であり、シティポップやアイドルへの愛情をエレクトロニック・ミュージックに乗せたのがtofubeats。現在は共に活動の拠点をメジャーへと移し、この一年で大きな飛躍を遂げました。

 少し見方を変えれば、これは現代が作曲家の時代だということを示しているとも言えるでしょう。赤い公園の津野米咲がSMAPに、tofubeatsがlyrical schoolに曲提供しているように、現在のアイドル・ブームというのは、優秀な作曲家がいるからこそ成り立っているものであり、バンドマンによるアイドルへの楽曲提供が増えたのは2013年の特徴。中田ヤスタカやヒャダインが引き続き活躍してるのももちろんそうだし、言ってみれば『あまちゃん』の大友良英も、ボカロPの活躍も、その文脈で語ることができるはず。そういう確固たる作曲家がいるタイプのバンドを並べてみると、赤い公園、住所不定無職、禁断の多数決、あとパスピエなんかが出てくるわけですが、やはり高い作曲能力プラス萌え/アイドル的要素という意味で現在のシーンの基盤を作ったのは相対性理論だなあと思うわけです。元メンバーの真部と西浦のアゼル&バイジャンがプロデュースし、津野とtofubeats(と、bloodthirsty butchersの吉村と田淵)が参加したタルトタタンの『グーテンベルクの銀河系』は、いろんな意味で今年を象徴する一枚だったと思います。

 さて、そうなると赤い公園とtofubeats、どちらを一位にするかが迷うところで、かつては無料で音源をばら撒いていたtofubeatsがメジャーに進出したというのはすごく意味のある出来事だったとは思うけど、『公園デビュー』がメジャーのファーストフルアルバムであることや、2013年が女性の活躍が目立った年だったことも踏まえて、赤い公園を一位に選びました。作品自体はまだまだ伸び代が感じられる内容だったと思うけど、いろんな意味で「ロック・バンドなんて退屈だ」と言われ続けるこのご時世にあって、「いやいや、全然退屈じゃないじゃん!」と胸を張って言えるだけの魅力が『公園デビュー』にはあったと思います。11月に行われたワンマンで配られた手書きのセットリストには「売れたいです!」って書いてあったけど、ホント売れてほしい。



 ちなみに、津野米咲をはじめ、今活躍してる作曲家の多くが作詞もできちゃうから、「スター作曲家」はいっぱいいても、なかなか「スター作詞家」って生まれにくい。でもそんな中にあって、いしわたり淳治以来、ひさびさにスター作詞家誕生だと思ったのが、元チャットモンチーの高橋久美子。東京カランコロンを皮切りに、ももクロやSCANDAL、年明けにはたんこぶちんとかにも詞を提供していて、こういう人がもっと増えればいいなあ。


 また、2013年という年は「始まりの一年」だったように思います。去年の取材の中でも、特に印象に残っているもののひとつである古川日出男さんとアジカンのゴッチさんとの対談でも触れられていたのですが、2011年の震災・原発事故後、2012年に様々な問題が炙り出され、「いよいよ新しい枠組みを作っていかなくてはいけない」という認識が共有されたのが2013年だったなあと。そんな中、アナログフィッシュ、やけのはら、(((さらうんど)))という、それぞれにつながりがあり、決して表立って旗を振るタイプではないものの、常に社会と対峙した表現を続けてきた三者が、新作のタイトルに「NEW」という言葉を用いていたのが、非常に印象的でした(それぞれ、『NEWCLEAR』、『SUNNY NEW LIFE』、『New Age』)。特に、2011年に『荒野 / On the Wild Side』という作品を発表し、「ここから始まっていく」という姿勢を示していたアナログフィッシュが『NEWCLEAR』へとたどり着いたということが象徴的で、これは『My Lost City』という作品を2012年に発表したceroが、2013年にニューフェイズに突入したこととも通じるように感じました。まだ2014年に出ることが確定ではないにしろ、三部作の完結編となるアナログフィッシュの新作も、ブラック・ミュージックに接近しているceroの新作も、どちらも非常に楽しみです。



 もう一人、「NEW」を用いた印象的な『Life Anew』というタイトルの作品を発表したのが、高橋幸宏。原点に回帰しつつ、新しいバンドでニューモードを示した氏の作品も、非常に印象的でした。特に、かしぶち哲郎と大瀧詠一が12月に続けて亡くなった今、鈴木慶一が歌詞を提供した“The Old Friends Cottage”がより重みを持って響きます。トクマルシューゴからcero、森は生きている、そして2014年にアルバムが予定されている失敗しない生き方やミツメ、また失敗のメンバーと同級生であるカメラ=万年筆やスカート、Babiといった昭和音大勢ら、若い世代が日本のポップスを掘り起こし、後ろの3組にとっては直接的な師でもある牧村憲一が『ニッポン・ポップス・クロニクル 1969-1989』を出版したことも、2013年がポップスの年であること印象付けていました。


 「NEW」という言葉について、もうひとつ触れておきたいのが、6月にリリースされた『夏を好きになるための6の法則』の3曲目にサラッと収録されていたミイラズの“NEW WOIRLD”。この曲は元々2011年にシングル候補とされていた曲ですが、結果的に保留され、2013年にやっと発表されたといういわくつきの曲。ただ、この曲の持つメッセージは、2013年の日本のロック・シーンでこそ広く聴かれるべき内容だったと思うのです。『君繋ファイブエム』から10年、アジカンが横浜スタジアムで記念ライブを行ったのと入れ替わるように、アジカンも所属するKi/oonのコンテストでグランプリを獲得したKANA-BOONが一気にブレイクを果たした2013年という年は、ある意味00年以降の日本のロックの総決算の年であったように思います。そんな中、袂を切ったかのようにあふれ出した、フェスにおける四つ打ちの飽和状態や、国内ロックの海外との乖離に対する議論。ターニング・ポイントがやってきたことは間違いありません。



 00年代の洋楽を中心に、革新的なミュージシャンの名前を挙げながら、その意志を引き継ぎ、新しい世界を切り開いていこうと歌う“NEW WORLD”は、そのキャッチーさも含め、2013年の状況を打ち抜く可能性を持った曲だったと思います。ただ、いかんせんタイムラグがあったことは否めないという感じ。で、これは僕の勝手な願望だけど、ミイラズが2014年にまず出すべきは両A面のシングルで、新曲一曲と“NEW WORLD”の2014年バージョン。次はバンドとしても新体制一発目の作品になるわけだし、タイミング的にもいいと思うんだよなあ。


 では最後に、2014年の展望を少し書いてみると、今年は「99年」がキーワードになるんじゃないかと思います。2013年は「90年代のJ-POPってよかったよね」っていう空気が、特に若い世代において共有された年であり、それはアイドル・ブームの土台にもなっていたはず。そして、これまでの歴史だと、リバイバルは20年周期が一般的だったものの、情報のスピードが速くなった結果、今では15年ぐらいにその間隔が短くなっているように感じます。そんな中、メジャーデビュー作で森高千里を起用して、2013年の90年代感を体現していたtofubeatsが、昨年後半にずっと聴いていたのが99年発売の宇多田ヒカルの『First Love』だったそうで、その15周年を記念したリマスター盤が3月に発売。赤い公園が2月に発売するシングルで平井堅をカバーしてたりもするように、R&Bが戻ってくる感じがちょっとある。で、これは海外におけるインディ・ロックとR&Bの接近、日本でもceroやミツメとかが示している動きともちょっとリンクする部分があると思うんだけど、さてどうでしょう?

 あとギターロックの新たな動きという意味では、00年前後の下北沢のギターロックが再評価されるんじゃないかと。新年早々のサプライズとなったBURGER NUDS(99年結成)の再始動、そして当時は必ず比較されていたバンプが結成20周年で、3月に新作を発表(CDデビューが99年)。年明けにはヘルマンの復活作が出て、アートの新作も制作中みたいだし、あとはシロップが正式に復活すれば…。そもそも、この時代のバンドっていうのは、90年代の洋楽直撃世代で、当時アジカンはウィーザー、アートはニルヴァーナじゃんって散々言われていたわけです。そこからスタートして、この10年をかけて彼らはオリジナリティを獲得していったわけですが、今はその上澄みだけをすくって、真似するバンドが増えてしまったと。だからこそ、このタイミングで今一度99年に立ち返ってみるということは、意味があることのように思うのです。NMEとかで取り上げられて、逆輸入で紹介されたtaffyなんて、ホントあの時代の下北沢の音だしね。そして、そんな流れの中からまた新しいバンドが生まれてくれば、とってもエキサイティングだと思います。



ではそろそろ、くるりが15周年で、B’zが25周年だった2013年に別れを告げましょう。2014年もよろしくお願いします。
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# by ashadeofshyness | 2014-01-14 14:24 | YEAR IN MUSIC